頭蓋骨~仙骨に約1~3gのソフトタッチ刺激を行い、脳脊髄液の循環改善を目的とする施術です。
その特徴から「頭蓋仙骨療法」とも呼ばれています。
この手法は1900年代初頭にオステオパシードクターであるウィリアム・ガーナー・サザーランド(1873~1954)により発展してきました。
サザーランドは50年の月日にわたり研究と実践を重ね・・
✔ 頭蓋骨の呼吸『第1次呼吸』
✔ 頭蓋骨独自の動き『歯車モデル』
などを発見しました。
頭蓋骨は動き、呼吸をすることで脳脊髄液を循環させているのです。
脳脊髄液の循環は『健康』に大きな影響を与えています。
今回は、解剖・生理学の観点からそのメカニズムについてお話していきたいと思います。
目次
メカニズムについて
脳脊髄液とは?
脳脊髄液(Cerbral Spinal Flaid)とは、脳や脊髄のクモ膜下腔を流れる無色透明な体液のことです。
脳はこの脳脊髄液に満たされた空間に浮かんで存在しています。
循環している容量は110~170ml(5~7時間で全て新しく入れ替わる)で、1日の総生産量は約500~700mlとなっています。
毎日、500 mlペットボトル1本分が生産されているイメージですね。
脳脊髄液の役割
①外部環境からの保護
・脳と脊髄は常に脳脊髄液に浮かんだ状態であり、外部からの衝撃を吸収する作用がある。
・血液脳脊髄液関門によって、脳脊髄液の電解質などの濃度はほぼ一定に保たれている為、血液組成の変化や有害物質などの影響を受けにくい。
②栄養作用
・脳および脊髄へ栄養を与える。
ブドウ糖、タンパク質、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、塩化物、リン脂質、リン塩酸、コレステロール、リンパ球、微量のビタミンC、ホルモンなどの神経伝達物質など。
とくにナトリウム、カリウム 、 カルシウムなどの金属イオンは、神経シグナル・活動電位を脳や脊髄へ伝えるのに重要となっています。
③老廃物の除去
・脳や脊髄の古い細胞などを除去する。
・リンパ液のような働き(代謝産物の運搬)
脳脊髄液は、外部環境から脳を保護するバリアであり、脳や脊髄へ栄養を与え、老廃物の除去など重要な役割を担っており、私達が健康を維持することができる土台となっています。
循環システム
脳脊髄液は、心臓から送られてきた動脈血が ①側脳室脈絡叢により濾過されて産生されます。
第3・4脳室でも脳脊髄液は産生されますが、側脳室の脈絡叢が最も大きく生産量も最大といわれています。
①側脳室および第3・4脳室脈絡叢から産生された脳脊髄液は、②正中口(マジャンディ孔)と、図にはないが外側口(ルシュカ孔)からクモ膜下腔へ出て脳表面や脊髄末端まで循環します。
循環した脳脊髄液のほとんどは、最終的に頭頂部にある③クモ膜下顆粒から吸収され、④上矢状静脈洞を通過し静脈血中へと流れ心臓へ戻っていきます。
頭蓋骨は動くの? ~第1次呼吸~
頭蓋骨は15種23個の骨によって構成され、脳頭蓋(6種8個)と顔面頭蓋(9種15個)に大別されます。
各パーツのつなぎ目はわずかに可動性があり、脳脊髄液の循環や産生に伴ってまるで呼吸をしているかのように動いています。
これが第1次呼吸です。
1分間に約6~12回のサイクル(約5~10秒に1回のリズム)で動いており、吸気で拡張(脳脊髄液を産生)、呼気で収縮(脳脊髄液を吸収)しています。
ちなみに肺呼吸のことを第2次呼吸と呼びます。呼吸といえば一般的にイメージするのはこちらではないでしょうか。
コアリンクとは?
脳や脊髄を覆っている3層(軟膜、クモ膜、硬膜)の膜があり、脳脊髄液はこの真ん中のクモ膜に流れています。
一番外側の層である硬膜は、後頭骨(大後頭孔付近)と第2・3頸椎、第2仙椎に付着しており、解剖学的なつながりがあります。
その為、頭蓋骨と仙骨は互いに影響しあっており、これをコアリンクと呼びます。
仙骨の硬膜の動きが悪くなると、つながりがある頭蓋骨の動きまで悪影響を及ぼすことがあり、もちろんその逆もあります。
例えば・・
骨盤周囲や腰痛などの不調があれば、頭蓋骨の動きを制限し、肩こり・頭痛などの原因になっていたり
逆に腰痛の原因が、頭蓋骨の動きの悪さからきていることもあります。
クラニオセイクラル・セラピーで期待できること
脳血流の還流を良くする
頭蓋骨が動きやすくなることによって、脳の動静脈の多くの出入り口にスペースを与え、脳への血液(脳脊髄液)循環の改善が期待できます。
その結果、本来持っている外部環境からの保護や栄養運搬・老廃物の除去作用が発揮され、健康を維持することにつながります。
自律神経のバランスを整える
自律神経には交感神経と副交感神経があります。
交感神経は心身を活動状態へ導く (緊張・興奮)
副交感神経は心身を休息状態へ導く(リラックス)
手足の筋肉を動かす運動神経などは自分の意志で動かすことができますが・・
自律神経は心臓やほとんどの腺、多くの内臓(平滑筋)など自分の意志では動かせない無意識レベルでの自己調整を担当しています。
クラニオには瞑想のような深いリラックス効果があり、自己調整力を促進します。(とくに副交感神経系を刺激する)
禁忌について
①急性炎症
②頭部外傷
③心臓発作(急性期)
③脳卒中(急性期)、脳腫瘍、脳浮腫
④脳動脈瘤
※これらの状態に該当する場合はリスクを伴う為、施術することができません。
現代社会でなぜクラニオセイクラル・セラピーが必要なのか?
現代社会は生活習慣の乱れ、人間関係、環境などでストレス過多になっており、交感神経系を長期的に刺激してしまうことが多いです。
上の図は各神経が優位に働いた場合、どのような影響があるかを表しています。
交感神経優位の状態が長期的に続いてしまうと、常に筋肉の緊張が高まり、内臓の働きも低下してしまいます。
その結果、慢性的な肩こり・頭痛となったり、便秘を引き起こし、肌荒れや生理痛、代謝低下による肥満体質、情緒不安定、免疫系のバランスを崩して体調不良になりやすいなど・・
様々な不調で悩むようになります。
自律神経はどちらの状態が良いというわけではなく、状況に合わせてバランスをとって働けることが重要となります。
クラニオセイクラルセラピーに期待できることは、脳脊髄液の循環や自律神経のバランスを整えることで、
本来持っている自然治癒力を最大限に高め、健康維持をサポートすることです。
自律神経の乱れからくる様々な不調でお悩みの方、健康や美容を維持したい方、プロスポーツ選手やビジネスシーンなどで高いパフォーマンスが必要な方などにおすすめの施術となっています。
現在クラニオセイクラル勉強中の者ですが、すごくわかりやすくまとめられていらっしゃり、感動です‼︎
ありがとうございます!
喜んで頂けて嬉しいです。今後も有益な情報発信を頑張りますね^_^